クロージャ変換が完了したら、いよいよSPARCアセンブリを生成します。しかし、いきなり本当のSPARCアセンブリを生成するのは大変なので、まずSPARCアセンブリに類似した、仮想マシンコードを生成します。どう「仮想」なのかというと、
の2点が主です。
このような仮想アセンブリを定義したのがsparcAsm.mlです。SparcAsm.expは、ほぼSPARCの命令に対応しています(if以外)。命令列SparcAsm.tは、関数の最後で値を返すAnsと、変数代入Letから成り立ちます。Forget,
Save, Restoreについては後で述べます。
クロージャ変換の結果を仮想マシンコードに変換する関数はVirtual.f,
Virtual.h, Virtual.gの3つです。Virtual.fはプログラム全体(トップレベル関数のリストと、メインルーチンの式)を、Virtual.hは個々のトップレベル関数を、Virtual.gは式を変換します。変換の主要な部分は、クロージャや組・配列の生成や読み出し・書き込みにともなうメモリアクセスを明示することです。クロージャや組・配列などのデータ構造はヒープというメモリ領域に確保します。ヒープのアドレスは専用のレジスタSparcAsm.reg_hpで記憶することとします。
たとえば、配列の読み出しClosure.Getだったら、要素のサイズに応じてオフセットをシフトし、ロードを行います。組の生成Closure.Tupleであれば、浮動小数のアラインメント(8バイト)に注意しつつ、個々の要素を順番にストアしていき、先頭のアドレスを組そのものの値とします。クロージャの生成Closure.MakeClsも、アラインメントに注意しつつ、関数本体のアドレス(ラベル)と自由変数の値をストアしていき、先頭のアドレスをクロージャそのものの値とします。これに対応して、トップレベル関数の冒頭では、クロージャから自由変数の値をロードします。ただし、クロージャによる関数呼び出し(AppCls)を行う際は、そのクロージャのアドレスを必ずレジスタSparcAsm.reg_clで与えることとします。
なお、SPARCアセンブリでは浮動小数を即値として記述できないので、メモリに定数テーブルを作成する必要があります。そのためにVirtual.gでグローバル変数Virtual.dataに浮動小数定数を記録していき、Virtual.fでプログラム全体SparcAsm.Progの一部とします。